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ドクダミママ至言

母業落第の果て:もっと早く知りたかった子育てへの答え

何が母親を追い詰めるのか?

ずいぶん前のことになる。

アメリカでアンドリア・イエイツという女性が自分の5人の子供たちをお風呂で溺れさせた殺人事件が話題となった。

 

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(出典: https://thumbnails.texastribune.org/CQRHanOM9DzCA-LQnSB4HD42kBs=/850x570/smart/filters:quality(80)/https://static.texastribune.org/media/images/2014/08/05/AndreaYates-Collage.jpg

 

たまたま出席したある女性の集会で誰かが彼女のことに触れていた。

「信じられないわ。自分の子供を殺すなんて。」

わたしは黙って他の人の意見を聞いていた。

でも内心は人ごとではないと思った。

誰にでも「魔がさす」ことはあるものだ。

殺人は確かに恐ろしい犯罪だが、人のことを言えた立場ではない。

 

それに後でわかったことだが、彼女は様々な精神病を抱えていた。

もともと学力的に優秀で高校も一番で卒業し大学は看護学を専攻していた。

卒業後は看護師(米国では女性のエリート職)として病院に勤務していた。

その後結婚をし子供を産んだ後に症状が悪化したらしい。

産後うつがひどいのに、年子で5人の子供を産んだ。

一人産むごとに症状がどんどんひどくなっていった。

その上ほとんどはたった一人で子育てをしていた。

自分の問題に対応しながら他の人間のニーズも満たさないといけない。

自分が満たされていないのにどうやって他の人間を満たすことができるのか。

様々な精神病薬を摂っていたがそれは一時効くだけで、

かえって狂ってしまったことも考えられる。

そして最後に我が子を全員殺してしまった。

 

私は彼女に同情心を抱いた。

かわいそうに。

一線を越えてしまったのだ。

本当はいい母親になりたかったに違いない。

我が子を愛していなかったわけでもないのだ。(判決は精神病院で一生治療を受けることになったが、毎日可愛かった子供達のことを思い出し自分のしてしまったことを悔いて泣いていたそうだ。)

彼女はたくさんのヘイトメールをもらっていた。

そこには「お前は最低の母親だ!」ということしか書いてなかった。

でもおそらく彼女は人から言われなくとも自分が最低の母親であると充分知っていたはずだ。

 

自分も完全な親ではない。

だからどの親がひどいとかどうだとか裁く資格はない。

ただ辛かっただろう彼女の気持ちがとてもよくわかる。

 

わたしは自分の子供を殺めたことはない。

でも時々、我が子ながら無性に可愛くなく見えたりイライラしたりということはたくさんあった。

プラス母親というのは常に疲れている。疲労が重なっている時に無秩序な子供に対応するのはかなり大変である。それも毎日無欠勤で対応するのである。果てしない砂漠を歩いているような感じでいつ終わりが来るのかもわからない。そして子育てで干からびていく自分を感じるのだ。

 

問題は一人で子育てをする孤独な環境が女性を追い詰めるのではないかと思う。

現代の核家族構成や社会構成に問題があるように感じている。

 

わたしは夫が博士課程にいる3年間、幼い子供3人と大学院の家族用アパートに住んでいた。周りは世界各国からの家族で、中国、韓国、中南米各国、マレーシア、ユーゴスラビア、ギリシャ、ドイツが代表的な国籍だった。アパートには広い芝生の庭が付いていて、各家庭の入り口は1階にあり1階と2階両方が住居スペースだった。だから子供でも自由に外と中を出たり入ったりが可能だった。

我が家の子供達は同じアパートの子供達と言葉があまり通じないけれど、いつも仲良く遊んでいた。母親たちは他の母親たちと話しながら同時に子供達が怪我をしないように絶えず目を離さないようにしていた。私は赤ん坊を抱えていてとても疲れていたために、同じアパートの母親たちがうちの上の子供たちをよく見ていてくれた。4番目の子供を産んだ後も、私が休めるようにと毎日長時間子供達を監視してくれていた。

自分の子供が悪いことをすればその母親たちが叱ってくれた。

悩みがあれば「いつでも」相談に乗ってくれた。

夫は博士課程でクラスを履修しながら新聞配達と大学の講師をしながら家計を支えていた。私は家で絵画を教えていた。お金もなくアパートも手狭でかなり老朽化していたが(プラス、ゴキブリがすごい!)、とても幸せだった。わたしたちには希望があったからだ。そしてもう一つの理由は、アパートには同じような境遇の隣人がいて互いに子育てを支え合っていたからかそれほどのストレスを感じなかった事が考えられる。

ひとえに言える。

子育てには理想的な環境だった。(↓ここに住んでいた!)

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(出典:https://radio.wosu.org/post/buckeye-village-closing-ohio-state-graduate-students-limbo

その後夫は博士過程を終え、私たち家族は他州に引越しをし小さな家も購入した。

そこから私の子育てのストレスが始まった。

一軒家に住み、たった一人で子育てをし始めてから始まったのだ。

家にこもって一人で一生懸命子供と顔を付き合わせながらの子育て。

子供が周りにいるのになぜか孤独を感じていた。

社会から完全に切り離されていたように感じていた。

まさに危険な環境そのものだった。

だからあの貧乏生活が懐かしくてたまらなかった。

 

そう言えば、この家族用アパートの外国人母親たちに聞くと、自分たちの国では皆こうやって協力して子育てをしていると言っていた。家族みんなで、コミュニテイみんなで子育てをサポートするらしい。だから母親が精神病になって子供を殺めるなんてことはないのだそうだ。それならこれは先進国特有の現象にちがいない。

核家族は親の世代とは異なる自立した若世代の好むような家族関係の構築を促すと思われているが、実は自立して子育てなんてほとんどの母親には無理のように思える。

一人で完全に責任を持って?

できるわけ?

私は4人の子供を育てるにあたってそうしようと努力したが、

今思うと「やっぱり無理」だったという結論に辿り着いた。

そして「できません」と素直に認め人の助けをたくさん借りるべきだったと

後悔している。

 

核家族子育てと社会から孤立した子育てが母親を追い詰める気がしてならない。

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ドクダミママ至言

核家族子育ては母親の精神衛生上最悪。

社会からの孤立も危険。

たった一人で向き合わない。

できないことはできないと認める。

理想と現実の違いをよく見極めること。

周りの助けをどんどん借りる。