何年も前に知り合いにこんなことを言われた。
「失礼を承知で言わせてもらうけど、
あなたの育て方が悪かったから、トビアス君(仮名)がこんな風になったわけよね。」
なんと。
これはどんな親も言われたくない言葉だ。
充分に失礼です。
思わずなんと返そうかと迷った。
でも口からでてきた言葉は
「あなたの言うことはごもっともです」
だけだった。
知り合いは、私が喧嘩を吹っかけてくると予測していたらしいが、
大人しく彼女の意見を受け入れたので何も言えなくなった。
その後知り合いが私に連絡をくれることは皆無となった。
あれは・・・
一種の虐めだったと今となってはわかる。
知り合いが帰ったあと、むしょうに胸がむかむかしてきた。
「夫にいとまれ離婚騒動の真っ最中にいるあなたのような人が人にどうこう言える立場なわけ?」
じぶんの人生がうまくいかないので、誰かを虐めて少しでもましな気持ちになろうとしたに違いない。
けれでも、
当たっていないこともない。
私は、彼女の言葉を借りていうなら
「負け組」なのだ。
それもそのはず
トビアスは
ゲイ。
そのことで知り合いは私を「負け組」扱いにしたのだ。
ゲイの息子は負け組で、その親も負け組。
そして知り合いは「勝ち組」。
そういうことらしい。
たった一人の意見だったかもしれないが、
恐らくマジョリティ社会も自分たちをそう見ている確率が高いという証明にはなった。
育て方が悪かったから、そういう子供になったと。
「負け組」のレッテルを事あるごとに人に貼り、
人の不幸をこよなく愛する人は世に捨てるほどいる。
そういう人のかっこうの餌食となったのが自分たちなのだ。
そしてこれからもそれは続くのだ。